デジモンイモゲンチャー外伝The Knight's Lost Memories  1stMEMORIAL『空から落ちてきた女』  風がデータで構成された草の海を優しく揺らし、遠くのポリゴンで描かれた山脈が薄紫のシルエットを描く。陽光に照らされて金色の輝きを放つ、ここはデジタルワールドの広大な平原だ。  ロングコートをなびかせ、磨き上げられたブーツで軽快に進むのは、戦場騎士(いくさば・ないと)とその相棒ズバモン。  コートには、ズバモンのいたずらで描かれた「20」の白い文字が、陽光に映えてかすかに揺れる。  騎士は、この退屈になりがちな旅路を、隣で跳ね回るズバモンとの他愛もない会話で紛らわせるのが常だった。  ズバモンは小さな体を弾ませ、軽快な口調で話しかける。 「なぁ、ナイト! このあたり、めっちゃ平和じゃん! なんかド派手な事件起きねぇかな?」  そのお気楽な声に、騎士は片眉を上げて冷ややかに返す。 「余計なトラブルはごめんだ。静かに進むのが一番だろ」  だが、口調とは裏腹に、彼の唇には微かな笑みが浮かんでいた。ズバモンの軽いノリが、長い旅の退屈を紛らわせてくれるのだ。  その時、遠くで鈍い爆発音が響き渡った。空が一瞬赤く染まり、騎士が鋭い視線をそちらへ向ける。 「なんだ!?」 「なんか来るぞナイト!」  ズバモンが飛び上がり、空を指さす。見上げると、黒い影がものすごい勢いでこちらへ向かってくる。  騎士がディーアークを握りしめ身構える間もなく、その影は彼に直撃。草地をゴロゴロと転がり、騎士は地面に叩きつけられた。土埃が舞い、草の匂いが鼻をつく。 「ナイトぉ~無事かー!?」 「ぐっ……重っ……!」  下敷きになった騎士が呻く。  彼を押し潰していたのは、赤いボディスーツが体のラインを際立たせた一人の女性だった。  ファーのついたブーツを履いた足が、転がった拍子に騎士の足に引っかかり絡んでいる。  彼女は、慌てた様子で飛び起きた。 「うわっ! ご、ごめんってー! ねぇ君、大丈夫!? 怪我してない!?」  その声は、まるでこの日の陽光のように弾けていた。  だが、騎士は顔を真っ赤にして視線を逸らす。  転倒の衝撃と、潰されてもがくうちに、いつの間にか彼女の豊満な胸に手が触れてしまっていたのだ。  柔らかい感触に、咄嗟に手を引っ込めるも、もう遅い。  女性もそれに気づき、目を見開いて叫ぶ。 「き、君ぃ! ドサクサに紛れてどこ触ってんのよー!」  彼女の頬がみるみる赤く染まる。騎士はムッとして反論する。 「わざとじゃねぇ! つか、なんで空から降ってくんだよ!」  ズバモンは草の上で腹を抱えて笑い転げる。 「ハハッ! 騎士、女の人に押し潰されて、しかもセクハラって! 最悪じゃん!」  その言葉に、騎士の額に青筋が浮かぶ。 「うるせぇぞ、ズバモン! 黙ってろ!」 「ううぅー!! まったく、いきなり乙女のピンチを襲うなんて、悪い子はお仕置きしなきゃね!」  ゆったりとした袖から彼女は朱殷と黒に彩られたアプリドライブDUOを取り出す。  騎士はそれを初めて見たが、これまでの経験から自身が持つディーアークと同じようなデジヴァイスだろうと判断した。 「やる気か!?」  騎士は、ズバモンに目配せする。 「ズバモン、準備しろ!」 「オッケー! やっと面白くなってきたぜ!」  ズバモンが飛び跳ね、騎士はディーアークを構える。 「アプモンチップ! レデ……あれぇ……!? レイドラモンのチップどこぉ!? まさか落とした?」  がさごそと袖をまさぐりながら何かを探す女性とそれを呆れ顔で見守る騎士。 「なんでぇ……うそぉ……今あるアプモンチップこれだけぇ!? 神(ゴッド)も極(アルティメット)もどこいったのぉ……!? あーもう超(スーパー)ならなんでいいや!  アプモンチップレディ! アタクシ、注入!」  いただきました。  超アプリアライズ! ウラテクモン!  ウラテクモン! とは 『攻略』 の能力を持つ アプモンだ!  ABILITY:攻略  TYPE:ゲーム  GRADE:(超)スーパー  POWER:13500  それは巨大な腕の生えたデカいゲーム機を頭に被った猿というような姿をしていた。このような存在を騎士は初めて見る。 「ウラテクモン……? 見たことのないデジモンだ」 「はー何もわかってないのねー。冥土の土産にお姉ちゃんが教えてあげるよ少年。ウラテクモンはデジモンじゃなくてアプモン!」 「少年!? 俺はもう16だ。子供扱いするな」 「子供じゃないならアタシの胸触った責任取ってぇ! 不同意わいせつ罪で捕まってぇ留置場で反省しなさいよー!!」  ウラテクモンがゲーム機らしきコントローラーを操作しながら飛び帽子の巨大な腕をズバモンめがけて振り下ろす。 「うわっ、危なっ!」  ズバモンは素早く横へ飛び退いた。ウラテクモンの拳が地面を叩きつけ、大地が揺れる。  叩きつけられた場所からは土煙が大きく舞い上がり、草が吹き飛んだ。 「アプモン……だと? だが、襲ってくるなら容赦はしない!」  騎士はディーアークを構え、ウラテクモンを見据える。  その目は冷静ながらも、目の前の未知なる存在への警戒を強めていた。  今の一撃は成長期のデジモンでは耐えるのは難しいだろう。おそらく成熟期に近い威力。  ならば騎士もまたズバモンを成熟期であるズバイガーモンに進化させ互角の条件で戦うのが基本。  だが騎士には他の手札があった。文字通り、デジモンカードが。 「カードスラッシュ! 高速プラグインH、ハイパーアクセル!」  高速プラグインによって素早さのあがったズバモンが、基本性能で勝っていたはずのウラテクモンを翻弄する。  騎士には自信があった。ズバモンならば1世代程度の差は、こうやって自分がカードで援護すれば容易く埋めれる差であると。  それは、これまで幾度となく共に窮地を切り抜けてきたパートナーへの信頼であった。  ズバモンもまた的確に援護を行う騎士を信頼しているからこそ、心に余裕を持って戦える。  素早さで勝ったズバモンを捉えることができず、ウラテクモンの空振りが続く。  そして大きく隙ができたところを、ズバモンは頭の剣で切りつける。 「ギャヒ~! ボス! こんなんじゃ俺様の『裏技』を使う暇もないウラ!」 「ディーアーク使いはこれだからなー。ア~タクシもアプリドライバーの戦いってやつを教えてあげちゃうよ~ん!」  そういうと彼女は袖からアプリドライブを取り出し、再びアプモンチップを読み込ませる。 「アプモンチップ! レディ!」  スリー!トゥー!ワン!  ウラテクモン! プラス レースモン!  ウラテクモンの背後に亀のヘルメットを被ったうさぎのようなアプモンがオレンジ色に光り輝き浮かびあがった。 「あれは……? ひとまず離れろズバモン!」 「おう!」  騎士の冷静な判断を受け、飛び退き様子を見るために距離を離そうとするズバモン。  だが、飛び退いた先に待っていたのは、先回りしていたウラテクモンが放った巨拳であった。 「うわああああ!」  ズバモンは自ら拳に飛び込んだ形になり、カウンターヒットで吹き飛んでいく。このダメージは大きいだろう。  これまでとは段違いにスピードが違うウラテクモン。一体何が起きたのか。 「これがアプモンの強み、アプリンクだよ少年」 「アプリンク……!?」 「レースモンはレースの能力を持つアプモン。アプリンクしたことでウラテクモンはその能力を獲得し、常に相手より速く行動できる。 たとえデジタルワールド最速のアルフォースブイドラモンやメルクリモン相手にだってね!」 「速さで勝てないなら! ズバモン、進化だ!」  その言葉に応えズバモンは四足獣の姿であるズバイガーモンへと進化を果たす。 「えー!? 成熟期に進化できるのに今までしてなかったのー!? まだ完全体や究極体、隠してるんじゃないでしょうねー?」 「さぁどうかな」  騎士はとぼけるが、これが彼らが繰り出せる今の全力だ。  ズバイガーモンの鋭い刃が陽を浴びてきらめき、戦いの場には緊張が走る。  先に動くのは当然ウラテクモンだ。相手より常に一手速い動きで拳によるラッシュを繰り出す。 「ウラウラウラウラウラウラウラウラウラウラウラウラァッ!」  ズバイガーモンはそれに対して尻尾の刃を使っての防戦一方だ。  騎士は冷静に相手の力を分析し始める。たしかにレースモンとやらの能力で速さでは勝てない。  しかし、それ以外のパワーやらはどうやら据え置きだ。  ズバイガーモンの体力を一瞬で削り切れるほどではない。やはりあのウラテクモンというのは成熟期と同格に近い。 「なら! カードスラッシュ! メタルアーマー!」  騎士が読み込んだ新たなカードの力によってズバイガーモンの体にメタルマメモンの兜のデータが付与されていく。  そして拳を捌くことを辞め、まともに受け止める。  ズバイガーモンの体はウラテクモンの拳から伝わる衝撃など、気にする必要もないほど硬くなっていた。  そして過剰な速さによる代償を受けることとなり、殴ったウラテクモン自身が拳を痛め悶える。 「ここからは俺のターンだぜ! 『ヴァンシオン』!!」 「ギャヒィィィ!?」  拳が通じず動きの止まった相手に対し、ズバイガーモンは体を一回転させ尻尾の刃で敵を切る必殺技、『ヴァンシオン』を放ち、ウラテクモンの体を切り裂く。 「ほー。やるわねー。今のお姉ちゃんの手持ちのアプモンじゃあのアーマーを攻撃で突破するのは、無理そうだねー。  たしかシエーンが前に言ってたわね。  普通のテイマーはデジモンを強く鍛え上げ、時にはアイテムでサポートする育てる力。  紋章持ちは人間が持つ美徳や悪徳でデジモンに影響を与え進化させる心の力。  デジソウル使いは人間とデジモンで対等に力を合わせることで生みだす協力という力。  ジェネラルは幾多のデジモンを従え状況に応じて一つにまとめる指揮能力と、その指示に従えるデジモンとの絆によって生まれる力。  そしてディーアーク使いはデジモンを状況に応じたカード捌きで支える、それをデジモンが信じて受け入れる信頼の力」 「……?」 「それでアタシたちアプリドライバーは、幾多のアプモンを状況に応じてリンクさせ組み替えることで、新たな未来を創り出す……全能にして創造の力だってね!  さぁーもう速さは要らない。なら次の手に行きましょ! アプモンチップ! レディ!」    スリー!トゥー!ワン!  ウラテクモン! プラス ゲンゴーモン!  今度はウラテクモンの後ろに鶏のような髪をしたアプモンが青い光りを伴って現れる。  一体今度はどのような能力を持っているのか。  そう思う間もなく、ウラテクモンから周囲に青白い光が広がって半径に円を作っていく。  デジタルワールドの平原を書き換えて、何かしらの領域が作られたのだ。 「"¡Oye, Caballero! ¿Qué hacemos?" (おい、ナイト! どうする?)」  ズバイガーモンがなにか言っているが、何を言っているのか騎士にはわからない。 「"Was ist das!? Was hast du gesagt, Zubaygamon?" (なんだ!? なんて言ったんだズバイガーモン)」 「"骑士? 啊,什么!? 那是哪个国家的语言!?" (ナイト? えっなに!? それどこの国の言葉!?)」 「ゲンゴーモンは翻訳の能力を持つアプモン。この力で、言語を崩壊させ意思疎通をできなくし信頼を崩す。 こういうのはシエーンがやる戦術なんだけどさー。アプモンチップがなさすぎてお姉ちゃんがやっても仕方ないよね!」  ディエースの言葉もまたどこかの国の原語に翻訳され、彼らには伝わらない。 (どうやらこの空間じゃ言葉が通じなくなっちまったみたいだ! 俺のカードすらもどこかの言語に置き換わって読めなくされている……!)  騎士たちはコミュニケーションを封じられて混乱する中、女性は次の手を打つ。 「ようやく隙ができたわねー。ここいらでお姉ちゃんが少年にすっごいウラテク見せちゃおっかー!」 「ウラテク巨大化コマンドウラー!!」  ウラテクモンが手に持っているコントローラーで素早くコマンドを実行すると、どんどん体が大きくなっていく。  そしてズバイガーモンを握りつぶせるほど大きくなった腕を撃ちつける。  それを避け切ることはできなかったズバイガーモンは、もろに食らって吹き飛ぶ。  メタルアーマーによる防御力の上昇がなければこの一撃で終わっていただろう。  いや、倒れ伏すズバイガーモンはまだ息があり体をなんとか動かせるというだけで勝負自体はもはや決まったも同然だ。 (どうすればいい!? 言葉を封じられたうえで敵は巨大化! デジタルだからって好き放題やりやがって!  まるで調子の悪いときに見る悪夢みたいだ。せめて英語に翻訳してくれたら分かるのに!)  騎士は考える。デジタルワールドでの旅は楽しかったが、危険も多かった。  その中で最も命の危険を感じた時があった。  落ちていたガラスの靴を拾ってしまった結果、究極体サンドリモンに襲われた時だ。  あの時と比べれば今の状況はそんなに悪くはないと思える。 (あの女はディーアーク使いの強みは互いを受け入れる信頼と言ってた。そのとおりだ。オレたちの信頼は言葉なんかなくても伝わるんだよ!)  もう一度、拳を振り下ろそうとする巨大ウラテクモン。  騎士は倒れたズバイガーモンを見据えると一直線で走り出す。 「えっ、なにしてるの少年!?」  その姿を見たズバイガーモンもまた騎士の意図を汲み取りその体を変化させる。  ズバモン、そしてその進化先であるズバイガーモンはレジェンドアームズと呼ばれる特別なデジモンだ。 『天使が持てば世界を救い、悪魔が持てば世界を滅ぼす』という言い伝えを持つ武器へと変形する事ができる。  ズバイガーモンが変形したのは剣。巨大な刀身と、その左右に爪のような意匠のついた剣だ。  騎士はその柄を握り締め今まさに、自身へと振り下ろされる拳へと向けて斬り上げる。  閃光が迸った。  ウラテクモンは真っ二つに斬り裂かれていた。  レジェンドアームズは武器となってこそ真価を発揮する。  その威力は、デジモンにとって絶対的な差を齎す世代差を超える力を与えるほどだ。  人間が振るってなお、その切れ味に変わりはない。いや、むしろ心から信頼できる人間が振るうからこそなのかもしれない。  ウラテクモンとゲンゴーモンがデータの光となりそれぞれのアプモンチップへと戻る。  色を失いディアクティブ状態へとなったアプモンチップは、しばらく使用不可能だ。  彼等を操っていた女性は一瞬の出来事に口を開けて唖然とする。 「どうだ……俺達の勝ちだ!」  騎士は相棒を掲げ勝ち誇る。  だが、その言葉に女性は両手を上げて肩を竦める。 「教えてあげるよ少年! パートナーを失ったら負けの大抵のデジモンテイマーと違って、アプリドライバーの負けってのはアプモンが消耗してアプリドライブのバッテリーが切れた時なの。  そしたらアプモンが残っていても負け。でも、残っているなら次のアプモンで戦えちゃうんだなぁ! アプモンチップ! レディ!」  バッテリモン プラス カードモン!  アプ合体! サクシモン!  サクシモン! とは 『シミュレーション』 の能力を持つ アプモンだ!  ABILITY:シミュレーション  TYPE:ゲーム  GRADE:(超)スーパー  POWER:21000  新たなる超アプモンの登場に騎士の心に絶望が宿る。  ウラテクモンをなんとか倒したとはいえ、ズバイガーモンはだいぶ傷ついている。一刻も早く手当てをしたかった。  しかし、まだ戦いは終わっていない。  あのサクシモンが今までと同じぐらい厄介な能力を持つアプモンならば、このまま戦いが続けば勝っても相棒の寿命が危ないかもしれない。  突然、女性の腹からグゥ~と情けない音が響いた。 「うっ……やば……腹減った……」  彼女は顔を押さえてその場に倒れ動かなくなってしまう。  同時に、サクシモンもまた光となりアプモンチップへと戻る。  あまりの急展開に、騎士は目を丸くする。 「お前……マジかよ」  騎士は深いため息をつき、戦意を失った女性を見下ろす。彼女の肩は力が抜け、まるで子供のようだ。  早急に回復フロッピーと絆創膏でズバモンの手当をしたのち、倒れ伏したままの女性をどうするか考える。 「……ほっとくわけにもいかねぇか」  騎士は渋々呟き、近くの集落に食事処があることを思い出す。 「おい、起きろ。ついてこい。腹空かせたままじゃ話にもならねぇ。オレが飯食わせてやる」  彼女の目がキラキラと輝く。 「マジ!? めっちゃいい奴じゃん少年!」  さっきまでの敵意は消え、彼女は一気に上機嫌だ。  ズバモンは「こいつ、ほんと調子いいな!」と笑いながら後を追う。  小さな食事処は、木造の暖かな建物で、香ばしいスープの匂いが漂っていた。  店主はティラノモンで、このあたりは恐竜型デジモンが多く生息する平原のため、自分も含め多く食べる彼等のためにボリュームを重視した食を出しているとのことだ。  女性は騎士の奢りで、山のような料理を次々と平らげていく。  デジモン向けの料理であるはずの色鮮やかで肉を主体としたザウルスピザやとんでもないボリュームのジュラシックバーガーを平然と食べ尽くす。  店主のティラノモンも「ダイナモンでもそんなに食わないぞ人間すげぇな」と言い出すほどだ。  騎士の支払いが10000BITを軽く超えたところで満足げに頬を緩め、ようやく落ち着いた彼女は、口元を拭きながら話し始めた。  彼女の名前はディエース。  アプリモンスターズカンパニー、通称アスタ商会を経営する二人の仲間と共に、空を飛ぶ船であるデジシップでデジタルワールドを駆け巡っていたのだが、 デジモン同士の戦いの流れ弾か何かが偶然当たり、その時ちょうど甲板に出ていた所を放り出されたのだという。  その際、彼女にとってのパートナーデジモンと言えるバディアプモンだったレイドラモンとも逸れ、さらに手持ちのアプモンもほとんどがまだデジシップに居るだろうという。  そしてここ最近は新商品の研究開発に夢中になって食事を抜かしてたためこんなに食べただけで普段はそんな食べないのだと言い張っている。  乙女として見栄を張っているのだろう。騎士は余計なツッコミを入れずに黙って聞いていた 「じゃあ普段はダイナモンぐらいってこと!?」  ズバモンは容赦なくツッコんだ。  ディエースは赤面し袖で顔を隠した。 「まぁこれで恋人でもないのに初対面のお姉ちゃんのおっぱい揉みしだいたことはチャラにしてあげるよ少年」  ディエースの言葉に、騎士も顔を赤くする。 「チャラって……お前、まだその話引っ張るのかよ!」 「ナイト、顔真っ赤じゃん! ディエースに完敗だな!  ズバモンは横でケラケラと笑いながら追い打ちをかける。 「だから少年の奢りでこんなご馳走食べられたんだから、許してあげるってば! でもさ、次はアタシと一緒に冒険しない? アプモンとデジモンの夢の共演、面白そうでしょ?」  とウインクしながらディエースは微笑みかける。  騎士は考えたのち、「お前と一緒に旅をするのはとても苦労しそうだな」と言いながら、唇には微かな笑みが浮かんでいた。 <続く> 次回予告  騎士の旅へと強引についていくディエース。  しかし運悪く、彼等はエリアを崩壊させながら進む嵐、デジタルストームに出会ってしまう。  ディエースのジショモンが持つ知識によるとこのあたりにはデジタルストームを凌げる青嵐の館がある事を知る。  なんとかたどり着いた彼らを館の主人、ゴッドドラモンが迎え入れる。  この地域は規則的にデジタルストームに襲われ、今回の周期では三日は舘で過ごすこととなるという。  騎士達以外にも嵐に遭遇しこの舘に避難してきたデジモンやテイマーたち。  だが次の日、宿泊者の一人であるソク・ジンホの姿が居ないことに気づく。  外へ行くことはできない中で、パートナーともども彼の存在が完全に消えてしまったのだ。  誰かが言った。こんな事ができる者は今のデジタルワールドで一人だけ。  この中に、イレイザーが紛れ込んでいる。  NEXT  デジモンイモゲンチャー外伝The Knight's Lost Memories  2ndMEMORIAL『嵐の舘』 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━ここからおまけ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  この物語は騎士くんに傷がつき記憶が失われた原因となる話をやるのです。  大体1話6000~9000文字程度の3~4話で済ませたいですね。  1話は騎士くんとこの物語のヒロイン的なディエースとの出会いとアプリドライバーの戦い方を見せる話ですが思ったより長くなっちゃった。 ■戦場騎士 「今考えてるオリデジがちょうどいいから傷つけたことにしていい?」と聞いて承認を貰ってから半年ぐらい立ってしまった。  強さを感じるデザインが難航しすぎた。  この一連の怪文書とかでどうかお許しください!! ■ディエース  26歳ぐらいの女性。一人称はアタシ。たまにアタクシ。猫みたいな目の輪郭してる。  赤いぴっちりスーツと黄色いマフラーと中華っぽいゆったりとした袖のある上着を来てファーの付いたブーツを履いている。  性格は誰にでも明るく面倒見の良い姉御肌。押しが強く我慢ができず人の話を最後まで聞かないことも多い。  食事はいっぱい食べる。  Sランクのアプリドライバーであるが現在は本来のバディであるレイドラモンと手持ちのアプモンも多くを失ってしまった。  基本的にゲーム属性を主体としたデッキを組んでいた。レースモンアプリンクはディエースの基本戦術。  今回所有してるのはレースモン×2️、セーブモン、ゲンゴーモン、バッテリモン、レッシャモン、ジショモン、カードモン、ウラテクモンのチップのみ。  次回冒頭はレッシャモンで旅してたりジショモンでエリアの情報を探したりアプモンの便利さを遺憾なく発揮する。 ■ウラテクモン:デジモンコラボ回の敵なので採用。あと巨大化は負けフラグだし。アニメでの技を使用。本来の必殺技は未使用だがウラテクの名の通りこいつゲーム属性特攻アプモンだからまぁデジモン相手には普通使わん。  なお、アニメでは何故かゲーム属性ではなくソーシャル属性になっていた。ゲンゴーモンのソーシャルフィールドはゲームでは本来お互いをソーシャル属性にする効果もあるのでそれで再現している。 ■デジシップ  ロストエボリューションに登場する空飛ぶ船。リアルワールドにも行ける能力を持つ。  作中ではゲーム開始初期に出たバンディッツの船(即墜落)、主人公たちが使う船、セレクターズがイレイザーを運ぶ緑の輸送船と3種類登場。 ■アプリモンスターズカンパニー(アスタ商会)  ディエースの開発力とアプモンの力で色々変なもん作って売ってる会社。  主力はクラフトモン、コピペモン、フェイクモン、エフェクモン、リヴァイブモンあたりでパクったり。  既存のアスタ商会との関係性は不明だが扱ってる商品は大した違いはないだろう。 ■アプリドライバー  テイマーとは違う独特な戦い方と、何でもありのデジタル能力バトル感と、結局素のパワーで負けたら負けるという部分を今回表現できたと思う。  アプリドライバー同士の戦いになると七属性相性と神と神メタと必殺技対策とアプリンク・アプ合体の複雑な読み合いやり始めるよ。  メインとサブを入れ替えたりアプリンクをガンガン駆使して戦うのが一番の強みだからみんなもっとアプモン大量に持つといいよ。  ジェネラルと似ているけどデジクロスはパワーの掛け算でアプリンクは特殊能力の掛け算ってイメージ。  いわばカービィ64のミックスコピーがアプモン。 ■Sランクアプリドライバー  3DS版アプモンのサイバーアリーナにおける最上位のトーナメントに参加できるランク。  モブも平気で神アプモン繰り出してくる。お前ら強すぎるな。  ディエースは本来このレベル。