「流すぞー目閉じろー」 「んーー!」 あまり広いとは言えない最上家のバスルーム、それでも背は伸びても肉の成長が追いついていない少年と小柄なデジモンが一緒に入る分には余裕がある。 人間界に慣れてきたとはいえ人間的な風呂の習慣がなかったフレイモン、風呂に入れ髪を洗うのは当面熱夢の仕事だ。 「あーもう振るなって散る散る」 「もう濡れてんだからいいじゃん」 まとわりつく水が嫌なのだろう、勢い良く頭を振って水を切ったフレイモンはそのまま浴槽に入ってしまった。 熱い湯の心地良さに顔を崩しながらパートナーにも入るよう急かす。 「俺はまだ体も洗ってないの!」 「じゃあ早く……ん」 急に黙り込んだフレイモンは湯船に沈んだ自分の小さな体の下半身と相棒の下半身を交互に見て顔を膨らませた。 「熱夢だけおっきくてずるい…」 「ずるいって…、デジモンには意味ない部位だろそれ…」 データ生命には不要なはずの性器、フレイモンにもなかった物。 それがアグニモンへの進化を経験してからその体に性器含めて人間の男性の特徴がいくつか現れるようになった。 デジ対の検査結果ではデジソウルの影響や進化を経験した事でのデータ量の増加、なによりフレイモン自身のパートナーに近付きたい感情によるものではないかと言われた。 体に起こった大きな変化ではあるがネガティブなものでもなく、元々極めて人間の男児に近い姿なのもあり当人達も周囲もその変化を意識する事は特になかったのだが。 最近になってフレイモンは自分に増えた部分の大きさや他者との差が気になって来たらしい。 だからってずるいとかそんな不満な顔を向けられても困ると熱夢は無視して体を洗う。 「オイラだってアグニモンに進化したら熱夢くらいあるし!頼れるし!熱夢に負けない男なんだからな!」 「ああうんそうだな男だよフレイモン」 浴槽の中で立ち上がり胸を張って腰に手を当て背丈に見合ったものをぶらぶらさせながら、鼻息荒く主張する姿は子供そのものだ。 自分達は対等なパートナーであり頼って良い存在だという主張はいつもなら嬉しい。 しかし言い出す理由が一物なのだから少年の対応もおざなりになる。 そんな雑さが気に入らないのか顔を膨らませているパートナーをなだめて浴槽に戻した熱夢はやっと湯に浸かる。 気を逸らす為に明日の朝食や予定の話を振りながら、この話が何度も蒸し返される確かな予感が熱夢に重く伸し掛かっていた。 (アグニモンになっても小6の俺と同等じゃすぐ俺に抜かれるじゃん…) 平均より大きな背丈と一物には悩まされる時もあったが、こんな形で悩みが増えるとは思っておらず流石に心の中で溜息をついた。