燦燦と輝く太陽が眩しいとある日、上機嫌な東雲が、向日葵を買って来た。 「これ、部屋に飾りましょう!」 そう言って東雲に微笑まれては、俺も断る理由など見付からない。 彼女が来てから、時々こうして東雲の思い付きで色々と買って来られる事があったけれど、 そのお陰で、元は殺風景だったこの部屋も、ずいぶんと見栄えが良くなったと思う。 「うん‥‥何か夏って感じがする」 俺の言葉を聞き、東雲が嬉しそうな顔をする。 「えへへ、良いですよね。お花屋さんでこれを見た時、凄く綺麗だなって思ったんです」 俺は、そんな東雲を見て思わず口元を緩めた。 一週間程持つというその向日葵の花瓶に水を注ぎながら、東雲が言う。 「これから暫く、私達の部屋を彩ってくれるんですから、大切にしないとですね」 春は確かチューリップを持ってきたし、夏には向日葵を持ってくる辺り、東雲らしいと言うか何と言うか。 「えへへ、お花って良いですよね。見てると心が落ち着く気がします」 確かに、こうして部屋に花があると綺麗‥‥というか、何となく丁寧な暮らし、みたいな雰囲気になると思う。 「お花屋さんに教えて貰ったんですけど、向日葵の花言葉は『貴方を見つめてる』、とか『憧れ』っていうんだそうです」 向日葵は太陽の方を向くらしいから、それが由来なんだろう。 「それに、花言葉って本数で決まるものもあるみたいで‥‥あ」 東雲は、何かに気が付いたように声を上げた。 「どうした?」 「いえ、あの‥‥な、何でもありません!」 東雲は恥ずかしそうに目を伏せ、その後パタパタと忙しそうなフリをして部屋に戻っていった。 これはきっと、あれだな。 その花言葉とやらに意味があると考え、スマホで「向日葵 3輪」で検索を掛けてみた。 これは‥‥いや、花言葉なんてそういう物、こちらの意識しすぎだと言われればそうかもしれないけれど。 それはそれとして、見なかった事にして、鈍感なフリをするのもあんまり良くないなぁと思ってしまった。 「さて、どうしようかな」 部屋の中で、黄色く輝く3輪の向日葵に見つめられる気がして、 今度は少し、こちらが恥ずかしい気持ちにさせられてしまう。