ニャアン人妻概念前史、エグザべくんとのなれそめ概念のお話するね。 「シュウちゃん!わたしと一緒に逃げよう―――」叶う夢ではなかった。シュウジと離れ離れになってしまったニャアン そこに現れたのは白く陶磁器めいた人型殺戮ロボット「ギャン(ハクジ仕様)」とエグザべ少尉であった。 そのままチベ級宇宙戦艦「パープルウィドウ」へ誘われ。キシリア・ザビ公の救護を受ける。 妊娠5ヶ月だった―――ニャアンという不安定なゆりかごに小さな命はしがみついていた。 キシリア様の庇護欲をそそるに十二分であった。これはエグニャアが愛の巣へたどり着く。助走のお話である。 「なにか望みはあるか?」への問いに対し「このこをうませてください…うませてくれたらなんでもやります」とワナワナ震えながら答えるニャアン 「貴公、宿しておるのか!?」というキシリア公の問にに対し「はい」とだけ答えた、怯えながらも力を宿した言葉であった。 「まぁよい、貴公の身体はグラナダで調べる…それまでその身体、わたしが預かる」とキシリア様 キシリア様の手は震えていた。『絶滅戦争』を掲げた一年戦争が残した負の遺産が眼の前の『難民ニャアン』と宿るその『生命』として残っている事を 戦争を指示した為政者キシリア公は眼の前で直視する。あれは行うべきではない戦争であった。 たとえ連邦との闘いといえどもサイド2の住民をすべて焼き殺し。シリンダー型コロニーごと地球に落とすなどという虐殺行為に手を染めるなどという愚かさ どれほど愚かな事だったかを、眼の前の少女の存在が語っていた。彼女が「マチュ」ではない事をキシリア様は知っていた しかし、その才能に彼女は賭けた。「宿る小さき命」を活かす『保証』と引き換えに。 「本来ならわたしの寝室で寝かせたいのだがな、わたしも公務で忙しい。」 キシリア様はニャアンを下士官室へ案内した。キシリア公はニャアンの震える手を握っていた。 本当はずっと彼女の隣にいてあげたかった。つないだこの手を今君につよく、握り返して欲しかった。しかし事実上ジオン最高権力者であるその身が許さなかった。 24時間臨戦態勢だった。 「エグザべ・オリベ少尉」「ハッ!」無重力空間にもかかわらずエグザべ少尉が海軍式敬礼で迎える 「彼女の目付けを頼むぞ」キシリア公「よしなに」とエグザべくん返す。 彼女の瞳は完全に曇っていた。ハイライトを失っていた。 「異性との同朋は不本意だと思うが、士官室は満員なのでな、この艦は私以外女が存在せぬ秘密の園なのだ、堪えてくれ給え」 キシリア様 「わかりました…なんでもします」とニャアン 「何も怖がる事はない、「ニャアンさん」と及びすればいいのかな?」とエグザべくん 「この子は今日で軍属なのだよエグザべ少尉、MSに乗るのだからな少尉の称号が与えられる、下士官にでもせねば示しがつかぬ」 キシリア様の優しきご厚意で「ニャアン少尉」が今ここに誕生する。軍規を読めるほどの識字力はニャアンには存在しなかった。 エグザべくんとニャアンに与えられた士官室。ベッド二つに二名が生活できるギリギリの足場。ほぼベッドと床しかない施設だった。 「ボロボロ…だね」とエグザべくん。それはまるでニャアンの心を表しているようであった 「着替え給え、君に配給された士官着だ…士官服なのが」 ビニールに包まれた真新しい士官服がニャアンの前におかれる とエグザべくん時計を見る 「もう夜時間だ、君も疲れただろう寝間着にしよう」と小さいクローゼットの中から簡素な寝間着を取り出す。 マチュが着ていたコモリンの私服よりももっと簡素な、作務衣みたいなものだと思って下さい。 「『寝るの』ですか?」ニャアン聞き返す。 「そうだよ、ベッドはカーテンで仕切れるからプライベートは確保できている。はずだ。むさ苦しい男と相部屋で申し訳ないが今は我慢してくれ」 とエグザべくん 「わかりました。『あなた』と寝るんですね」 ニャアンはエグザべくんの前で脱ぎだす。ボロボロになったスタジャンもスキニーシャツもすべて。 うまれたままのニャアンが目の前にいる 「こんな事、もうしたくなかった。とニャアンは心の中で何度も悔いる。この子さえいなければここで殺されてもよかった―――こんな浅ましい行為に手を染めたくない」 ニャアンは心の中で何度も呟いた。けど、現実はそれを許さなかった。また『買われる』んだ。拒否する事もできず。 抗うこともできずに私はまた人に『買われる』「飼われる」「飼育」される毎日が始まるんだ。 こるなる位だったら運び屋でいる人生の方がよかったな、毎日大変だったけど、「明日」は保証されていた。けど眼の前にいるのは軍隊である そして娼(あそびめ)として飼われるんだ…いやだなぁ…イヤダ…もうあんな生活絶対にいやだ! ニャアンの思考は巡りに巡ります でもお腹の赤ちゃん…赤ちゃんは産まないと、どんなに辛い事があっても耐えないとッ!というニャアンの思いは錯綜していた。 震える身体を抑えるようにニャアンはこわばった声で名乗る 「はい…みだらであさましいわたしのからだを、ごらんください」 少し膨らんだお腹と鼠径部の淫紋が殿方を迎え入れようとしていた。 悲しき言葉だった、もう二度と口にしたくない言葉だった。 あの時、あの暴漢たちに言わされた言葉をニャアンはそのまま口にした、覚えているもんだねあんな卑しい台詞の数々を。 ―――躰が覚えているんだ。 「なんでも…なんでもしますから…もういたいことしないで…あかちゃんうみたい」 とうわ言のように呟くニャアンはいいます 「あかちゃん!あかちゃんうみたい…だからなんでもします!」 士官室中に響いていた。悲しい響きだった エグザベくんは悲しい顔をしていた。鼠径部にピンク色が覗ける淫紋の正体もエグザべくんのうぶな心に刺さった。 エグザべくん、自分のジャケットをニャアンにかけてあげる。 「そんな事はもうしなくていい、しなくていいんだニャアン少尉?ここはジオン軍だ」エグザべくん優しいですね 「でも…わたしはジオンに『飼われた』んじゃ…」とニャアン 「「飼う」んじゃないきみの才能を「買った」んだよ。そんな浅慮で僕たちジオン軍人を見ないでほしい、わかる…わかるね?」 ニャアンは震えながらくびを縦にふった。今ここに性的束縛から解放されたニャアンが生まれ落ちた。 「自由だッ!」紫色のキラキラの中でニャアンは叫んだ。許されたのだ。 「さぁこれに着替えて…下着まで支給されているみたいだね、僕は部屋を離れているから着替え終わったら読んでくれ給え」 とエグザべくん、ニャアンはそそくさと着替える。ドアを空ける 「着替えたね、落ち着いたかい?」エグザべくん「わかりません、ほんとうに何もしなくていいのですか?」 「グラナダに着くまでは何もしなくていい。君はゆっくりとどっしりと構えれいればいいんだ。その…お腹の赤ちゃんと一緒に、健やかにね」 エグザべくんの言葉はやさしいものばかりでした。 「きみにどんな過去があったのか、僕にはわからないが。ここは平和だ、ジオンと言う軍隊にはいるがここは平和なんだよニャアン少尉だから落ち着いていいんだ」 「こんなことゆるされていいんですか?」「いいとも、だから今日はもう寝なさい」エグザべくん ニャアンは脱ぎ捨てた衣服をキチンと畳んでクローゼットにしまう 「あなたは…やさしい人なのですね」「やさしくせよ、とキシリア様からのご命令でね。まぁ命令がなくとも女性には優しくしなさいと教わっただね」 ニャアンむっつり顔になります。この人はどこか抜けてるなぁとニャアンは思いました 「もう寝ようニャアン、消灯時間だ。おやすみなさい」とエグザべくんは自分の寝床に入る ニャアンもビニールで包まれた士官服を抱きながら眠りにつく これからどんな事がまっているのだろう、ニャアンの未来予想図は明るいものではなかった。 しかしキシリア様は優しい。そして眼の前にいる男は私を犯さなかったからきっとやさしい。と思案するニャアンの姿があった グラナダまであと3日。どんな運命が待っているのでしょうね。ニャアンとあたらいし命の旅はこれからはじまる いつも いつも 僕が君を 見ていてあげるから 安心しておやすみ 傷つけ合う事に 慣れてしまった この世界 そこで僕らは産まれ 育った。 小室等の名曲「無題(改め子守唄」を口ずさみながら寝床へつく。お腹をなでる手はとてもやさしい チベ級戦艦「パープルウィドウ」の夜は更けていく。 これはエグザベ少尉とニャアン少尉のなれそめの物語。ここからエグニャアが始まっていくのですね、尊いですね。 以上がニャアン人妻概念前史のおはなしです。エグザベくんと結ばれるといいですねニャアン 次回のジークアクスの内容次第で語りたりない所があると思いますので、続きはまた後日 ◆◇◆◇ ニャアン人妻概念前史、エグザべくんとのなれそめ概念のお話するね。 「シュウちゃん!わたしと一緒に逃げよう―――」叶う夢ではなかった。シュウジと離れ離れになってしまったニャアン そこに現れたのは白く陶磁器めいた人型殺戮ロボット「ギャン(ハクジ仕様)」とエグザべ少尉であった。 そのままチベ級宇宙戦艦「パープルウィドウ」へ誘われ。キシリア・ザビ公の救護を受ける。 ニャアンその時、妊娠5ヶ月だった―――。父親はわからない。 ニャアンという不安定なゆりかごに小さな命はしがみついていた。 キシリア様の庇護欲をそそるに十二分であった。これはエグニャアが愛の巣へたどり着く。助走のお話である。 前回のあらすじ:)ニャアンは無事保護されパープルウィドウの艦内で保護される事となった。 士官室で一夜を迎えた、エグザべくんと共に過ごす夜。なにもない訳もなく…怯えながらニャアンはエグザべくんを身体で誘おうとした 生きる為の彼女なりの処世術だった。悲しい処世術だった。エグザべくんは誇り高きジオン軍人だから誘いには乗らなかった。 ニャアンはそんなエグザべくんを信頼した。そして眠りについた 目が覚めると見知らぬ世界が広がっていた。金属に囲まれたような空間。狭い、とても狭い。 「ここはどこ?」とニャアンの心は不思議でいっぱいだった。おとうさんやおかあさんがいない…ここはおうちじゃない。 「どこ!?どこ!?」と士官室から出ようとする所を寝起きのエグザべくんが制止した 「ここは戦艦パープルウィドウだよ、ニャアン少尉」とエグザべくん 「あなた…だれ?わたしおうちに帰りたいの」と誓願するニャアン 「ニャアン、気は正気かね?」とエグザべくん 「どうしてわたしの名前を知っているの…お兄ちゃん!」ニャアンの瞳は疑いの目から期待の目へ変わる 「おにいちゃん!おにいちゃんだ!」 ついさっきまで震えていた身体はどこか元気が湧き出す様であった。幼子のような仕草が見える 「お兄ちゃん!お兄ちゃん!」ニャアンはエグザべくんにベタベタする 「どうしたんだいニャアン少尉」エグザべくん困惑するばかり 様子が変なニャアンを前に内線。「こちら医務室」と相手は答える 「エグザべ少尉です、ニャアン少尉の様子がおかしいのです」 医務室に送られるニャアン。瞳孔の確認や、聴診などを行う。 「おむねの音を聞くんでしょ、はい」と素直に乳を顕わにするニャアン。 「先生、これは」困惑するパープルウィドウクルーとエグザべくん 「精神科は専門外ですが、一時的な幼児退行でしょう。ショッキングな出来事が多かったと聞きますが」と先生 「ええ、かなり昨日は、彼女にとってハードな一日だったと思います。」エグザべくん 「鎮静剤を投与してグラナダまで大人しくする事もできますが?」と軍医の先生 「そこまで手荒な事はしたくない」とエグザべくん 紫のマスク姿が医務室のニャアンを見る。全員敬礼 「『夢』から覚めれば現実世界に戻ってくるのだろう?」キシリア公であった。 「今はステキな時間を与えてあげようじゃないか。夢から醒めた時の対応が問題だな」とキシリア様 こうして、幼児退行ニャアンはとりあえそのままというのが診断結果であった。「経過観察」とう名目であった 「ここ、どこ?」と怯えるニャアンに寄り添うのは目付け役のエグザべ君であった。 強襲揚陸艦「ソドン」からの来賓である彼は艦内勤務は無いので。うってつけのお目付けという名の遊び相手だった。 「おにいちゃん♪おにいちゃん♪」何か現実から逃げるように懐いてくるニャアン そんなニャアンに優しく接するエグザべくん、自然と子ども相手には慣れていた。今は消し炭になった郷里に妹か弟がいたのかもしれない。 ご飯も一緒、お風呂も一緒(!?)。ステキな一日が流れていた。もう寝る時間だった。地球圏標準時間は21時を指していた。 (火星や木星などでは独自の周期があるのでその限りではありません。地球と火星の公転速度に違いがあるのは映画「オデッセイ」などで有名ですよね) 士官室でも洗面台は共有だ。廊下に一つ。しかも狭い。コップと歯ブラシと「うがい受け」(ブクブクした物を吐き出す専用のトレーみたいなもの)を持って口腔ケア 「じょうずに歯磨きできるかな?」エグザべくん「できるもん!」とニャアン。ちゃんと歯磨きできたかチェックするのもエグザべおにいちゃんの仕事だった これ本当に仕事かなぁ? 「もう寝ようニャアン」「うん、おにいちゃんいっしょにねよう」 エグザべくんの前で下着姿になり寝間着に着替える姿にエグザべくんはビビらなかった。彼女の鼠径部にある刻印がはっきりと見える 「おやすみなさいニャアン」といいかけた時にニャアンは士官室から見える小さい窓から宇宙をみた。地平線なき宇宙の中、月面が近づいている 「おうちにかえらないと」とニャアン、ワナワナしはじめる。記憶が戻ってきたのだ!曖昧だった感情が統一化される 「おうちにかえらえないと!おにいちゃんおうちにかえらせて…おうちに帰らないとおかあさんとおとうさんがしんぱいしてる」 「ニャアン…おうちはね、ずっと遠いんだよ。ぼく達は今月面のグラナダを目指してる。」 「いやだ!おうちかえらないと!おうちにかえして!おうちにかえりたい!」 グズりだすニャアン。幼きニャアンの心の奥から呼び起こされる黒い渦のような記憶 崩壊するサイド2。電流がプラズマ化してオゾンめいた香りのする酸素。燃える建築物。連邦軍とジオン軍。 燃えるおうち、おかあさん。おとうさん。みんな燃えています 「いやだ!いやだ!おうちなくなっちゃう!おうちなくなっちゃうサイド2にかえして!」 サイド2―――。その言葉にエグザべくんは魂を重ねる。この子もサイド2出身なんだ。そして戦禍に焼かれたのだ。 「おかあさん!おかあさん!いやだ!しんじゃいやだ!」 ニャアンの泣き声がパープルウィドウに木霊する。宇宙戦艦といえども薄い構造材で囲われた全長200mほどの箱庭である。音は全艦内へ響く。 「目覚めてしまったのか。しのびない」キシリア様勤務室にもその悲しい叫びは響いた。 しかし彼女の訴えに何かニュータイプめいた能力を感じずにはいられなかった。 「あの無垢たる叫びも―――才能なのか?」訝しむ。 「おかあさん」宙を見つめているニャアン。その瞳はどこを見ているの定かではない。 「おかあさんおとうさん…もういない…いないんだ…しんじゃった」 ニャアンの心は徐々に我へと帰っていく。ぬくもりを感じる。見知らぬ男の肌触り。 「嗚呼、また私、抱かれているんだ。知らない男に組み敷かれている」と記憶の深さはさらに深くなっていく。難民時代の悲しい過去も掘りだろうとしていた。 「ニャアン少尉!もういい!もういいんだ」とエグザべくんは涙を浮かべて抱きしめていた。 ニャアンの焦点は次第に元通りになっていく、記憶が鮮明になっていく。 「わたし…わたしは…」幼児退行していたニャアンが元のニャアンに戻っていきます。 お腹に手をやります。命が蠢いています。現実である事を知ります 「気にしなくて良い、今日はもう遅いから寝なさい」とエグザべくん 消灯しようとするエグザべくん 「エグザべ少尉、ありがとうございました。やさしいひとなんですね」とニャアン 断片的な記憶ですがエグザべくんに可愛がられていたのを思い出したみたいですね 「いいんだ、キミはこれからが大変なんだ、おやすみ『ニャアン』」 『少尉』の二文字は消えていました。二人の間に階級は関係ありませんでした。 幼きニャアンとの触れ合いでそういう仲になってしまった。なってしまったのです。 「おやすみなさい」とニャアンも一礼し、ベットへ就く。 「産んであげる、ぜったいうんであげるからね」とお腹をさすりながら眠りにつくニャアン ニャアン妊娠5ヶ月の出来事だった。 以上がニャアン幼児退行概念の全容です 次回のジークアクスの内容次第で話足りない所が出てくると思いますので、続きはまた後日。 ◆◇◆◇ ニャアン人妻概念前史、エグザべくんとのなれそめ概念のお話するね。 「シュウちゃん!わたしと一緒に逃げよう―――」叶う夢ではなかった。シュウジと離れ離れになってしまったニャアン そこに現れたのは白く陶磁器めいた人型殺戮ロボット「ギャン(ハクジ仕様)」とエグザべ少尉であった。 そのままチベ級宇宙戦艦「パープルウィドウ」へ誘われ。キシリア・ザビ公の救護を受ける。 ニャアンその時、妊娠5ヶ月だった―――。父親はわからない。 ニャアンという不安定なゆりかごに小さな命はしがみついていた。 キシリア様の庇護欲をそそるに十二分であった。これはエグニャアが愛の巣へたどり着く。助走のお話である。 前回のあらすじ:)ニャアンは無事保護されパープルウィドウの艦内で保護される事となり、エグザべくんと二人士官室で眠る。 ショックで幼児退行を起こしたりもしたけど、悲しい事に現実に引き戻されてしまったニャアン。傍にはエグザべくんがいた あと1日ほどでグラナダへ到着する。 「どうだ?戦艦と言えども所詮は外洋型航宙船。宇宙船の生活は慣れんだろう」 「はい…」とニャアンはキシリア様の執務室へ呼ばれる。 「この狭い船で半年もを時間を費やし、アクシズという小惑星まで行くのだから人類の進化は恐ろしいものだ、もう太陽系を我が物としようとしている」 キシリア様は語ります。ニャアンの髪に櫛を通しながら。 絢爛たる鏡台を前にニャアンは借りてきた猫のような大人しさを見せていた。 「あまり難しい話は…わかりません」とニャアン 「これから学べばよい、貴公にはまだ人生の余剰がある」 「よじょう?」「まだ先は長いと言う事だ」 「でも…わたしにはこの子がいます。赤ちゃんの世話をしてたら学校なんかいけない」 お腹の子を撫でるニャアンの掌はとても温もりにあふれていましたが。鏡越しに見えるニャアンの瞳からはハイライトが消えている事をキシリア様は確認していた。 ニャアンは士官服から膨らんだお腹をさすります。芽生える『悲しい命』だという事をキシリア様は知っています 「ジオンには子がいても学ぶ親は多い、先の戦争で男を大分失ったからな。これからは賢い女が必要なのだよニャアンよ」 「かしこい?」「そうだ、貴公は賢き乙女となるのだ。賢者たるものに力を振るわないのが夜の成り立ちだ。賢くおなり、ニャアン」 キシリア様はニャアンの櫛通しの良さに驚きます。髪が傷んでいないのです。 苦労の積み重ねである彼女の乙女たる黒髪はきっとダメージで荒んでいると踏んでのこの鏡台でのやりとりでした。 「官給品の洗髪石鹸はひどかろう。グラナダに継いたら私と同じ物を使い給え」 「いえ…そんな事恐れ多くて」「遠慮するでない」 「しかし、周りから『キシリア様のお気に入り』って見られる…多分、虐(いじ)められます。」 ニャアンの処世術というかニュータイプの勘は鋭かった。 「その点は安心しなさいお嬢さん。貴公はもう私のお気に入りとして見られておる。かわいい飼い猫だ。眼の前にいる老いた女はな、本来なら影も踏めぬ存在であるぞ」 「キシリア様もまだ…お若いので?」 劇中でミゲルやエグザべくんに見せたジト目でキシリア様を見つめる。 ニャアンはキシリア様の掌を見る。人間、年齢を隠せないのが掌だ。まだうら若き艶を見せていた。 「先人がな、ニュータイプ同士嘘はつけないと言っていたがな。本当だな。私はまだ24歳の若き女だ。その女に一軍の将と公国の全権を任せるとはな、おかしいだろ」 「こなしているキシリア様は立派です」 ニャアンはもうキシリア様について行こうと思っていました。 一宿一飯の恩を授かったら最後。自分の親であっても主人の前に立ちはだかれば殺さないといけないのが渡世です。 キシリア様とニャアンの話は続きます。謂われはないとはいえ他人の手垢まみれの難民の少女との会話はとても楽しかったそうです。 「手駒」にするには十二分の才能を感じました。 「本当にイズマコロニーに親族はいなかったのか?」キシリア様 「親族はみなサイド2で死にました。ともだち…ともだちとも離れ離れになりました。逢えるものなら逢いたいですが、未練はありません」ニャアン 「そうか、友との再開は難しいかもしれんな…」 「シュウちゃん…シュウちゃんとは友達」ニャアンはお腹をなでてうわ言のように口付さみます。 「小さき彼女なりの悩みがあるのだろうな」とキシリア様はそこには触れない。 「スカートな、眠っている間にサイズを図らせてもらったキツくはないか?」 「ええ、今の所は。けどきっとキツくなります。お腹の膨らみは日を追うごとに増しています」 「母親なのだからな。安心せい、グラナダで一働きしてもらえば貴様ら母子安全に産ませてあげよう。妊婦用のアツラエを用意せねばな」 「がんばります」 「『イオマグヌッソ』という機械のスイッチを押す。それだけの仕事だ、その程度の仕事なのだがニュータイプにしかできんのだよ」 「わかりました」 意味深な会話が続きます。 キシリア様との談笑を終え、ニャアン食堂でポツンと座っている。厨房係の下士官が「安心しなさい」とココアを入れてくれました 「ありがとうございます」とニャアンがココアに一口つけると…なぜかシュウちゃんとの思い出が脳裏に浮かびます。 マチュが疑っていたシュウちゃんと私の関係。決して恋仲じゃない恋人になれなかった悲しい関係。 「どう?おいしい?」と厨房下士官。「はい、おいしいです。このこもおいしいって言っています」と作り笑いのニャアン。 シュウちゃん…シュウちゃん…このお腹の赤ちゃんがシュウちゃんだったらよかったのになぁ あの赤いキラキラに入って、シュウちゃんと二人。赤ちゃん産んで過ごせたらよかったのになぁ 叶わなかった願望がニャアンを襲います。現実にはなりませんでしたがニャアンの願望、願望だったのです。 その願望もキラキラと一緒に消えてしまった。 もう、一人で産むしか無い。育てるしかないという現実がニャアンを襲います 「こんな赤ちゃん…もう産みたくない」 ニャアンはふと発した言葉にハッとします。そして否定するようにお腹を抱きしめます。 ニャアンは下士官室へと急ぐ。自分に赦された数少ないプライベートすページだったから 「うわああああッ!!!!!!」 ニャアンは泣いた。今の自分に泣いた。キシリア様は未来を約束してくれたけど。一人で産んで一人で育てるという現実がニャアンを襲った 望んで授かった命じゃない!なんで!?どうして!?こんなの望んでいない…あの暴漢たちは何もしらずのうのうと暮らしているというのに! なんで私だけ!とニャアン心の悲痛が聞こえます。 ニュータイプの才能がある者は必ずニャアンの心の叫びを感知します。キリシア様も例外ではありませんでした。駆けつけたいが接岸前、忙しいのです 「エグザべ少尉、たのむぞ」と艦内電話で一言。エグザべくん士官室へすっとんで来ます。他の入眠中の士官達も困り果てた様子でドアの前に立っている 「すいませんご迷惑をかけて」 とエグザべくん一礼 「いや、いいんだ。しかし悲しすぎやしないかね?」と某航海長が溢す 「彼女の悲しみはまだ底が見えていません…どうすればその悲しみから解放されるのでしょうか?」エグザべくんも困っています。 「ニャアン、入るよ」と士官室のドアを空けます。そこには枕を齧り、泣くのを必死でこらえるニャアンがいます。 「ニャアン、落ち着こう。軍医さんからおくすり貰えば落ち着ける」 「妊婦に向精神剤は危険です」という軍医さんであったがこの錯乱状態のニャアンをどうにかしないといけない 「いやだ!わたし!産みたくない!こんな命!産みたくない!!!!」 「ニャアンどうしたんだ!」 「産みたくない!!」悲しい問答が続きます。エグザべくん、一息落ち着けてから彼女にやさしく話します。 「義務感で子を産むのは辛いよニャアン、ニャアンの好きにしていいんだよ」 エグザべくんの言葉にニャアンはハッとします 「いいんだ、君が望んだ赤ちゃんじゃない!その生命をどうするかは君が決めていいんだ」 エグザべくん選択の余地を与えます。ニャアンの心が穏やかになる事を願うばかりです 「ちがうんですエグザべ少尉!わたしは…わたしはッ」 ニャアンはまくらを噛みながら告白します 「いやなんです!私は『産みたいくない』と願う自分がイヤなの!」 泣き崩れるニャアンは下腹部を思いっきり殴り始めます。不安定な揺り籠に危機が訪れます 「この命さえなければッ!!!!」 「やめろ、やめるんだニャアン」っとエグザべくんがニャアンのお腹を護ります。後ろから羽交い締めにしてニャアンを拘束した 「いやだぁぁぁいやだ!!!!」 「ニャアン、きみの好きにしてもいい、けどお腹の子を殴るような乱暴な事はやめよう…産むか産まないかはグラナダで決めよう」 ワケワカになっていたニャアンにエグザべくんの言葉が染みてきます。己の堕胎を示す行為を反省します 「ごめんね…ごめんね赤ちゃん…産もうね…赤ちゃん産もうね」 と自分を信じ込ませるようにつぶやき続けるニャアンの姿をただ見守る事しかできなかった。 一方そのころグラナダ某研究機関の格納倉庫、そこに一つの命が芽生えようとしていた。 サイコミュを身を纏うその姿、紫色のフレームがまた美しき機体であった。ジークアクスとは違い牙はない しかし、牙無きものの力になりうる。やさしい獣であった。 ガンダムジークアクス2号機。通称「ジフレド」である ジフレドは牙なきジークアクスであるが、軋む金属音めいた咆哮をあげた 「―――目覚めたか!」キシリア様はこうなる事を知っていた 「はい、ニャアン少尉の脳波と完全に同調しています。ジフレドは今、彼女の心に身を委ねています」 「これが母なる物の力というのか。善き事だ。これが望んでいた姿だ。グラナダへ到着次第ジフレドと同調テストだ」 そう、この日。ニャアンの悲しい叫びを聞いたMS「ジフレド」君の瞳が彼女の魂と呼応して光ります。 『ニャアン。この命は自分が絶対護る』という絶対的なプログラムがGフレドくんに刻み込まれます。 今月面に紫の巨人が吠える。これから先は誰にも予想できない! どうなるエグニャアン! 以上がエグニャアンなれそめ概念の全容です。続きます 次回のジークアクスの内容次第で語り足りない所があると思うので、続きはまた後日。