※注意 『かっ、かっ、怪文書を読む時はぁ〜部屋を明るくして離れて読んでね!』(歌:三馬鹿&アシフトイモンズ) ───────── 「鳥も〜魚も〜どこ〜へいったの〜 トンボも蝶もどこへいったの〜」 ちょっとしたイベント用に設けられた小規模なライブステージ…。その壇上で歌っているのは財前 日影ちゃん、歌う事が大好きな小学五年生の女の子です。 本来ならば人前で歌うのは苦手な日影ちゃんですが、パートナーのキャンドモンやデジタルワールドで出会ったお友達が背中を押してくれたおかげで勇気付けられ、ミニライブという形でその素敵な歌声を披露するに至った様です。 「水銀、コバルト、カドミウム ナマリ、硫酸、オキシダン シアン、マンガン、バナジウム クロム、カリウム、ストロンチウ〜ム」 辺境にある施設内の、ほんの一角で組まれたものとは言えライブは大盛況。 最前列に集まったレアモン集団によるヲタ芸も手伝って会場は物凄い熱気に包まれています。 「汚れちまった海、汚れちまった空 生きものみん〜ないな〜くなって〜 野も山も黙っちまった〜 地球の上に誰も〜誰〜もいなけりゃ、泣くこと〜も出来ない〜〜」 さぁここからはいよいよサビです。 より一層の力を込めて歌うべく、日影ちゃんは大きく息を吸いました。 「かーえせ!」 『かーえせ!』 「かーえせ!」 『かーえせ!』 「み〜どり〜を青〜空をか〜えせ!」  『かーえせ!』 会場いっぱいのお客さん達による合いの手も加わり、場内の作り出す空気はまさに一体感そのもの。 今までずっと人前で歌う事を避けてきた日影ちゃんですが、大勢の人に歌を聴いてもらい、一緒に盛り上がる事の楽しさを知ったその表情はとっても生き生きとしています。 「かーえせ!」  『かーえせ!』 「青〜い海をか〜えせ!か〜えせ!」  『かーえせ!』  「かーえせ!かーえせ!かーえせ! 命を太陽をかーえせ!かーえせ!か〜〜え〜〜せ〜〜!!」 『かえせ!か〜えせ!か〜えせ〜〜!!』 一曲目を無事歌い終えた日影ちゃんを、巻き起こる盛大な拍手と歓声が迎えました。 日影ちゃんはそれに応える様に笑顔で客席に向かって手を振ります。 少々照れの混じったぎこちない笑顔ですが、それが返ってお客さん達のハートを鷲掴みにして離さなかった事は言うまでもありません。 まだまだ一曲目の余韻冷めやらぬ中、日影ちゃんが上がった呼吸を整えたと同時にかかり始めるイントロ… 日影ちゃんは持っていたマイクをぎゅっと握りしめ、次なる曲に臨むのでした。 ───────── 2025年12月25日。キャス子ちゃんこと木末 聖煌ちゃんがデジモンイレイザーへの御礼参りを始めてから三日目…。 相も変わらずデジタルワールドを駆け巡っているのかと思いきや、今日は違うみたいです。 「そんな時は拳を振り上げて〜恐れず戦いを挑め〜ばいい〜」 キャス子ちゃんは右手を持った棒切れをぶんぶん振り回しながらとってもご機嫌な様子でお歌を歌っています。 「希望という武〜器がある〜限り〜きっとぼ〜くら〜きっと勝〜てる〜」 キャス子ちゃんがこうして機嫌よく何かに打ち込んでいる分には特に問題行動を起こす事も無いので、一緒に冒険している大峠 佳織ちゃんも一安心。 少しでも長くこの時間が続いてくれる事を願うばかりです。 「トリエラさんからのプレゼント、すっかりお気に入りだね。キャス」 佳織ちゃんが浮かれに浮かれるキャス子ちゃんに声を掛けると、キャス子ちゃんはそれを肯定する様に頷いて、右手の棒切れを力強く振り降ろしました。 どうやらトリエラさんからのプレゼントというのはキャス子ちゃんが持っているこの棒切れの事を指している様です。 今日12月25日はクリスマスであると同時にキャス子ちゃんの誕生日。 それを知ったトリエランドのトリエラさんは是非お祝いしたいと魔法の杖をプレゼントしてくれたのです。 ──── 「メリークリスマス&お誕生日おめでとう、キャストライトちゃん!はいこれ、私からプレゼント!」 「…………木の枝?」 「魔法の杖よ。何か困った事があればこの杖を持って『アバダケダブラ!』って叫んでみて。きっとキャストライトちゃんの力になってくれる筈だから。」 「アバダ…」 「待って!私で試そうとしないで!困った時に使ってね。良い?」 ──── 「トリエラねぇねがくれた魔法の杖…早く試したい………どこかにデジモンイレイザー居ないかな?」 嗚呼…キャスの機嫌に関係無くどのみち御礼参りは続くのね…と佳織ちゃんはやれやれなご様子。 「じゃあ探しに行こっか」 とは言え、一度言い出したら聞かないのがキャス子ちゃん。 そんなキャス子ちゃんの手を佳織ちゃんがしっかり握って先導しようとしたその矢先…… 突如、空に開いたデジタルゲートから何かが降って来ました。 よくよく見てみるとそれは全身ぴっちりスーツの人間………そう、デジモンイレイザーです。 あまりに唐突な出来事に佳織ちゃんが驚いていると、一人また一人とデジモンイレイザーが降って来ます。 止め処なく振り注ぐデジモンイレイザーの雨霰。佳織ちゃんがあんぐりと口を開けたまま固まってしまった一方で、ゲートの中にクティーラモンと思しき影を見たキャス子ちゃんはすぐさま状況を把握しました。 「ありがとう…お母様…。」 空から降って来たイレイザーはお母さんからの贈り物。キャス子ちゃんはお母さんへの感謝の言葉を述べ、魔法の杖をイレイザーの大群へと向けます。 が、降って来たイレイザーの数があまりにも多過ぎるため狙いを絞る事ができません。 目算でおおよそ7、80人といったところでしょうか?せっかくお母さんがプレゼントしてくれたのですから一人たりとも撃ち漏らしたくないところ…。 そこでキャス子ちゃんは閃きました。 「ねぇ、チョコモン」 「あぁ、わかってるぜ。あれの出番だな。」 キャス子ちゃんの呼び掛けに佳織ちゃんの背中に貼り付いて待機していたチョコモン(プリスティモン)が応えました。 どうやらチョコモンも考えている事はキャス子ちゃんと同じ様です。 「そう、あれ…何とか将軍が持ってたやつ…。」 「…これだろ。ほらよ」 チョコモンがお腹のファスナーを開けて体の中から取り出したのはダークネスローダー。 日竜将軍バルバモン マモンモードを倒した際に入手した戦利品です。 チョコモンからダークネスローダーを受け取ったキャス子ちゃんはかつて日竜将軍がやっていたのと同じ様に、見様見真似でダークネスローダーを前へと掲げ叫びました。 「……デジモンイレイザー!強制デジクロス!!!」 次の瞬間、イレイザーの群れは吸い寄せられる様に一箇所に固まり、ぴっちりスーツの巨人へと姿を変えます。 流石のイレイザーもいきなりでっかい体にされてしまった事にびっくりして戸惑いを隠せない様でしたが、相手を優に超えるほどの巨体を得たのは好機とばかりに大きな足でキャス子ちゃん達をぺっちゃんこにしようとしますが…… 行動に移すまでがあまりにも遅すぎました。 既にキャス子ちゃんの持つ杖の先は巨大デジモンイレイザーへと向けられていたのです。 「…アバダケダブラ」 先端から放たれた緑色の魔力光はデジモンイレイザーの巨体に諸に直撃。瞬く間に巨大イレイザーは物言わぬ骸となって崩れ落ち、果ててしまったのでした。 その死を裏付けるように巨大イレイザーのデジクロスは解け、さっきまでデジモンイレイザーだったものが辺り一面に転がります。 敵とは言え、そのあまりの惨状に佳織ちゃんはキャス子ちゃんの魔法を危険視せずにはいられません。 「良い?キャス。せっかくトリエラさんがくれたプレゼントだけど、これからはよっぽどの事がない限り使っちゃダメ。あたしと約束出来る?」 「?………わかった。佳織ねぇねがそう言うなら…」 無闇矢鱈と魔法を使わない様にしっかりと言って聞かせる佳織ちゃん。キャス子ちゃんも佳織ちゃんの言う事を素直に了承した様です。 「よしよし。良い子のキャスにはあたしからも何かプレゼントあげないとね。何か欲しいものとかある?」 佳織ちゃんはキャス子ちゃんの頭を撫で撫でして何でも欲しいもn「何でもとは言ってない!」 出来得る限りで欲しいものをプレゼントすると約束しました。 そして、キャス子ちゃんが出した答えは… 「キャス、ラムチョップのミントソース添えが食べたい!」 ───────── 森の中は鬱蒼と生い茂る木々が日光を遮り、昼間だと言うのにぼんやりとしか先が見えません。 ここ、アトラーカブテリモンの森は1年半ほど前に大きな戦いがあり、戦禍によって森の大部分が焼き尽くされ、一度は更地同然になったと住人達の口から語られていますが、今となってはそんな大事件があった事など微塵も感じさせないほどに森は元の姿を取り戻しています。 「以前アトラーカブテリモンの森に訪れた時に3人でミントモンを植えた」というグミモン(ピニャタモン)の言葉を頼りに、佳織ちゃんはすやすやと寝息を立てているキャス子ちゃんをおぶって獣道を進んでいました。 おんぶの状態で足場の悪い道を歩く佳織ちゃんをパートナーのヌメモンは心配そうに見守っています。 「アネゴぉ…大丈夫か〜?」 「あたしは大丈夫だから…。相棒こそ逸れない様ついて来てよね」 若干の疲労が見えながらも、心配をかけまいと精一杯強がってみせる佳織ちゃん。 「いや〜、毎度毎度すまねぇな」 「あんまり佳織の負担にならない様にって言って聞かせてはいるんだけどよ」 眠っているキャス子ちゃんの肩に乗っかるチョコモンとグミモンも申し訳なさそうに労いの言葉をかけます。 「そう思うんならあんたらは降りてよ!」 言っている事とやっている事が真逆な二人を叱咤し、すぐさま降りる様に促す佳織ちゃんですが、大きな声を出したせいでキャス子ちゃんが起きてしまいました。 「佳織ねぇね…」 「あ…ごめんねキャス、起こしちゃった?」 「あっち……」 鼻をくんくんさせながら、キャス子ちゃんはある一定の方向を指差します。 お母さん譲りの常人離れした嗅覚を持ったキャス子ちゃんは匂いにとっても敏感、例え深い森の中であっても目標物の匂いはすぐに嗅ぎ分けられるのです。 「そう言や確かに見た事ある気がするな、この辺の景色」 「おっしゃー!行こうぜ佳織!全速前進だ☆」 キャス子ちゃんにしがみついているグミモンとチョコモンも目的地がすぐ近くと知って大はしゃぎですが…… 「あんたらはさっさと降りろ!!」 調子に乗り過ぎて佳織ちゃんに本気で怒られてしまいました。 ですが、真っ先に行動して佳織ちゃんから降りたのはキャス子ちゃんでした。 佳織ちゃんに叱られたと思ったのか、キャス子ちゃんはしゅんとしています。 「あぁごめんごめん、キャスに言ったんじゃないからね?」 「あ~あ、やっちまったな佳織〜」 「いくらなんでも今のは怒鳴り過ぎだと俺も思いましたまる」 「はいはい、アンタらはちょっと黙ってようね」 キャス子ちゃんをあやす佳織ちゃんを尚も煽り続けるグミチョココンビ。そんな二人を見かねてか、チョ・ハッカイモンに進化したヌメモンは両者の首根っこを掴んで少し距離を置きました。 「ねぇねごめんなさい…」 「だから今のは違くて……ほら!ラム肉のミントソース食べたいんでしょ?早く行くよ」 少々強引に…ではありますが話の流れをぶった切った佳織ちゃんはキャス子ちゃんの手をしっかりと繋ぎ、目的地へとズンズンと進みました。 もう少し行けばキャス子ちゃん達がミントモンを植えた場所に到着です。きっとそこには見渡す限りのミントモン畑が広がっているに違いありません。 ですがキャス子ちゃんと佳織ちゃんの目に飛び込んで来たのは信じられない光景でした。 「え?何これ!?」 二人の眼前に聳える大型ショッピングモール。まさか真心こめて植えたミントモン畑がこの巨大な商業施設になったとでもいうのでしょうか? 建物には『ひと屋アトラーカブテリモンの森支店 開店記念SALE!』の文字がデカデカと書かれた垂れ幕が下がっており、辺り一帯がひと屋の敷地となっている事が伺えます。 場所を間違えたかな?と元来た道を引き返そうとする佳織ちゃんでしたが、 「ここで間違いない…微かにだけどミントの香りがする……」 とキャス子ちゃんは走ってショッピングモールの中へと入ってしまいました。 「あっ!ちょっとキャス、待ちなって!」 「………良いかアンタら、絶対に問題行動を起こすなよ。わかったな?」 佳織ちゃんが慌ててキャス子ちゃんを追い掛け、グミチョコの首根っこを掴んだままのチョ・ハッカイモンも二人に注意を促した後、それに続きました。 勢いで飛び込んだモール内はつい先日開店したばかりというだけあって来店したお客さんでいっぱい、森の住人と思われるデジモン達がそこかしこでショッピングを楽しんでいます。 入って早々キャス子ちゃんを見失ってしまった佳織ちゃんはチョコモンとグミモンにあの子の行きそうな場所に心当たりは無いかと尋ねますが、二人とも不貞腐れた様にそっぽを向き、口を利こうとしません。 本当にこいつらは…と佳織ちゃんも困り顔です。 「大丈夫だよ、アネゴ。 この姿でならオレも鼻は利くんだ。絶対に探し出してみせるよ」 そんな中でかけてくれたチョ・ハッカイモンの言葉に佳織ちゃんは途轍も無い安心感と心強さを覚えました。 やっぱりあたしの相棒は頼りになるな〜と心の中で思いながらお店の奥へと進もうとしたその矢先…… 「お!キャスが呼んでるぜ」 チョ・ハッカイモンに掴まれ大人しくしていたチョコモンが突然彼女の手を振り払い、ウェンディモンへと進化。そのまま一陣の風となって姿を消してしまいました。 「チョ・ハッカイモン!」 「わかってるよ、急ごうアネゴ」 「俺…呼ばれなかった……」 完全にチョコモンを見失ってしまいましたが、チョ・ハッカイモンであれば匂いで後を追う事が出来ます。 キャス子ちゃんに呼ばれなかった事にしょんぼりしているグミモンの事などお構い無しに佳織ちゃんとチョ・ハッカイモンは先を急ぎます。 果たして二人はキャス子ちゃんとチョコモンが何かやらかしてしまうその前に見つけ出す事が出来るのでしょうか? ───────── 「はいどうぞ。落とさない様に気をつけてね」 「…ありがとう」 その頃、一人先に行ってしまったキャス子ちゃんはフードコートのアイスクリーム屋さんでアイスクリームを頼んでいました。 注文したのはチョコミント、バナナアンドストロベリー、オレンジソルベのトリプルです。 デジモンイレイザーに邪魔されたせいで食べられなかった念願のアイス。 さあ、いただきま… 「あら、良いものを食べていますね。 そのアイス、私にくれませんか?」 キャス子ちゃんがアイスを食べようとしたその瞬間、怪しいお姉さんに声を掛けられました。 「おいおい、魅燐さんよぉ。そんな小さな子にたかるなよな」 「ふふっ、ありがと」 『魅燐』と呼ばれたそのお姉さんはパートナーらしきデジモン__ターキモンの忠告を無視し、キャス子ちゃんの返事も待つ事無くアイスの乗ったワッフルコーンをぶん取ってしまいました。 魅燐ちゃんが一番上のチョコミントアイスにかぶりついたその時…… ドゴォッ!! 跳躍したキャス子ちゃんが魅燐ちゃんの側頭部に回し蹴りをお見舞い。不意の出来事に魅燐ちゃんは対処し切れず、何が起こったのかも理解出来ないままぶっ倒れてしまいました。 「テメェ何しやがる!?」 いくら魅燐ちゃんが悪いとは言え、パートナーが危害を加えられているのを黙って見ているわけにも行かないターキモンは臨戦態勢に入りますが…… 「チョコモン……!」 キャス子ちゃんの呼び掛けに応えるが如く一筋の風が駆け抜け、ターキモンは瞬く間に幼年期の姿へと変えられてしまいました。 こうなってしまうとターキモンは全くの無力です。 キャス子ちゃんが魅燐ちゃんの髪の毛を乱暴に掴んで何処かへ引き摺って行く様をただ眺めている事しかできません。 それでも諦めたくないターキモンはフヨフヨと浮かぶ綿飴の様な体の舵を精一杯に取り、キャス子ちゃんの後を追います。 魅燐ちゃんも魅燐ちゃんで抵抗を試みて必死に暴れますが、よくよく見てみるとキャス子ちゃんの手を振り払おうとしている様でいて、ちゃっかりキャス子ちゃんが持っているぬいぐるみを奪い取ろうと手を伸ばしています。 しかしながらこの度を越した手癖の悪さがキャス子ちゃんの更なる怒りを買ったは言うまでもありません。 魅燐ちゃんの動きにも即座に対応したキャス子ちゃんは瞬時に髪を掴んでいた手を持ち替え、ヘッドロックを仕掛けました。 「がああああ」 存外強い力で絞め上げられ、抵抗する事も叶わず呻き声を上げる事しか出来ない魅燐ちゃん。 そんな彼女の耳元でキャス子ちゃんは囁く様に語り掛けます。 「アイス、欲しいんでしょ?好きなだけ食べられるところ、キャス知ってるよ。……ほら」 「…あがっ……ぁ゛……」 朦朧とする意識の中、強引に首を捻じ曲げられた魅燐ちゃんの視界に映ったものはサービスカウンターのすぐ脇にあるドライアイス製造機。 このままでは口の中いっぱいにドライアイスを捩じ込まれてしまう…… そう感じた魅燐ちゃんは涙目で嫌々と首を横に振ろうとしますが、何分首をガッチリと固められてしまっているが故に思う様に体が動きません。 キャス子ちゃんが技を掛けたまま製造機の方へ一歩踏み出したその時です。 「やめんかっ!」 「あぅ…!」 不意に背後から現れた佳織ちゃんがキャス子ちゃんの脳天にチョップを食らわせました。 キャス子ちゃんが手を放した事でようやくヘッドロックから解放された魅燐ちゃんですが、咳き込んだままその場に蹲ってしまい、しばらくはまともに動けそうもありません。 それでも尚、赤く爛々と光る目を魅燐ちゃんへと向けるキャス子ちゃん。 どうやら更なる追い打ちを仕掛けるつもりです。 一歩、また一歩と魅燐ちゃんに迫りますが…… 「ちょっ!キャスやめなって!」 間一髪のところで佳織ちゃんが羽交い締めにして何とかこれを阻止しました。 「ねぇね放して……!」 「落ち着けってば!何があったか、まずあたしに話してよ、ね?」 どうにかこうにか落ち着かせ、キャス子ちゃんから事情を聞き出した佳織ちゃん。 うんうんと頷くと、呼吸を整え一息ついている魅燐ちゃんの方へと静かに振り返ります。 「ごめんねキャス。やっぱこの人が悪い。」 佳織ちゃんの言葉に身の危険を感じた魅燐ちゃんは即刻この場から離れる事を選びますが、それを行動に移そうとしたその次の瞬間…… ドゴオォォォォォォォオン!!! 逃亡など許さないとばかりに大きな金属の固まりが魅燐ちゃんのすぐ真横を突っ切り、その横顔を掠めました。チョ・ハッカイモンです。 魅燐ちゃんから僅か数cmという紙一重のところで得物の鉄槌が振り下ろされ、床面に深々と食い込んでいたのです。 これがほんの少しでもズレていたら……魅燐ちゃんの背筋に冷たいものが走りました。 次は当てるぞ…そう目配せするかの様に顔をこちらへと向けたチョ・ハッカイモンに恐怖した魅燐ちゃんは脇目も振らずに逃亡。 しかしそれを許さないとばかりに道着に身を包んだ男の子が魅燐ちゃんの前にふらっと出現。咄嗟に放たれた正拳突きによって魅燐ちゃんは突き飛ばされ、逃げる事さえも封じられてしまうのでした。 「大峠さんにキャス子ちゃん、こんなところで何やってるんすか?」 「あ…ゲキ師匠だ…」 「近一こそ何してんの?こんなところで…」 近一ゲキくん。三人のやり取りを見るにこの子がキャス子ちゃんや佳織ちゃんの知り合いである事は明白です。 万事休す…。魅燐ちゃんがもうおしまいだと諦めかけたその時、颯爽と現れたのは彼女のパートナーでした。 「待ちやがれっ!!」 幼年期へと退化させられ、戦う事もままならない状態ですが、命に代えても魅燐ちゃんを守り抜くという強い意志が確かにそこにはありました。 ギュインギュインギュイーン!! そんな彼の想いに応えるが如く魅燐ちゃんのデジヴァイスは輝きを放ち、顔の付いた黄色い綿飴は立派な角を蓄えた一匹の雄牛へと姿を変えました。 本来の力を取り戻したターキモンが、魅燐ちゃんには指一本触れさせまいとばかりにその鋭利な角を力強く振るいます。 「♪晴れの日ばかりじゃないから、たま〜に〜」 「「「「いや、お前が歌うんかい!?」」」」 フードコート近くのイベント用特設ステージ。そこで歌い出した日影ちゃんに思わずツッコミを入れてしまう佳織ちゃん、ゲキくん、魅燐ちゃん、ターキモンの4人なのでした。 (To Be Continued)