アニス・ソープ [酒場(娼館)]
ガヤガヤと酒と喧噪が飛び交う酒場。
……いや、そう見える場であったが、ここは違う。
周囲を歩く女達は皆誰もが煽情的な姿をしており、男にしなだれかかり、しきりに二階の部屋を指し示している。
そう、ここは娼館。
シーン神殿が公認をし、娼婦たちに仕事の場を与えるために経営されている夜の店であった。
そんな艶やかな女達の中、ぽつりと緊張気味に佇む一人の少女がいた。
金の髪を靡かせ、あちらこちらで行われるやりとりを、顔を赤くし見守っている。
「あわわ……本当に、本当に来ちゃいました。ここが……娼館。ここで、私は……その」
少女の名前はアニス・ソープ。れっきとしたシーンの神官であった。
今日、彼女は……ここに体調を崩し、シーン神殿で休んでいる娼婦の代理。
――代理娼婦として働くべく、手をあげ、やってきたのだ。
「……お、驚いてばかりはいられませんね。私も、く……来ると名乗り出てしまった以上、お仕事を……しょ、娼婦の方の仕事をしなくては……っ!」
胸元に手をあて、小さく拳を握りながら気合を入れる。
そして、そんな彼女の前に客はやってきて……。