②引き留める 気付けば私の身体は歩み寄って、男を抱き締めていました。 「ここで生きるのがよいでしょう。あなたが優しいと、暖かいと言ってくれた……人ではないこの私と」  ああ、言ってしまった。  私がどうしたいかではなく、彼がどうすればいいのかを言ったのは最後の意地。 「お嬢さん……雪女かい……?」 「ええ。私は氷の魔妖にございます」 「でも、やっぱり暖かいよ」  とうとう身体が触れたことで私の冷たさが彼にも伝わったことでしょう。  だというのに、まだそんなことを。 「……そんなことは、ありません」 「いや、暖かいよ」  そう言ってくれた男は私の身体を、強く抱きしめ返しました。  もう拒むことなどできませんでした。  彼の身体も、暖かった。 「あなたこそ、暖かいです」  ようやく絞り出した声は震えていた。  立場とか使命とか色々ありますが……とりあえず、今はいいのです。  この人が暖かいと言ってくれているから、それでいい。 「もう一度言うよ。ありがとう」  彼は私の身体を解放してから、今度は両手で私を包み込んでくれました。  もう、温もりは逃げません。  その熱が愛おしいから、私は離したくありませんでした。  少し経ってから彼はまた私に語ります。 「それじゃあ……お世話になろうかな?」  ああ。ようやく留まってくれたのですね。 「ええ、どうぞ」  そこから数年。  結局、そんな感じで未だこの隠れ家に同棲を続けています。  今なら分かります。  何故妲己がああなったのかも。  我らは人でないが故に、人に狂わされる。  自らが持たぬものを持つ存在に惹かれるのは、必定だったのでしょうね。  私にとっては……彼の暖かさとか、こちらを見る眼だとか……。  結局、今現在のように身体さえも重ねてしまっています。  彼の熱いモノを私の身体にねじ込まれ、もっと熱いものが吐き出される。  その感覚が、たまらなく好きなのです。 「ああっ♡そこっ、んはぁ♡」  昔では考えられない程によがって、喘いでしまう。 「雪女……っ!」  ああ、そんな眼で見ないで。  もっと、求めてしまうから。  彼のモノが抜いて、挿して、抜いて、挿してを繰り返し続けます。 「んんっ!あはぁ♡やぁっ♡」  その感覚の一つ一つが私の身体に刻み込まれていくようでした。  もう離したくないけど、人の生は有限だ。  ならば魔妖の仲間に……と考えて、それも思い留まる。  それまでを濃密に生きる他にないのでしょう。  後のことなどどうでもいい。  私が好きなのは……この熱を持った彼なのですから。 END② 人の熱で蕩かされて