俺と突然の再開を果たした聖騎士時代のかつての同僚だったナチアタ=コンナーニ。 見た目は大分変ったが、中身はとりあえず元の人格を維持していることは喜ばしいことだ(元から口数少なかったし)。 だが彼女を連れて旅をするには大きな問題があった。 それは外見が魔族を通り越して魔獣の領域に入ってるということだ。早速ライトと共に対策会議を開く…。   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇ ライト「上半身は服を着てもらうとして、下半身はどうしましょうか? ヤドカリみたいなのがくっついてるし、手を使って四つん這いじゃないと動きにくいみたいですし…」 ミレーン「とりあえず布を被せて馬着のように見せかけるしかないだろ。ナチアタには頑張って四つん這いをやめて、背筋を伸ばして歩いてもらうしかないな」 ライト「まぁ現状それしか策はないですよね。でも種族とかはどう言い訳しますか? 魔族に寛容な国でもアレはさすがに人型離れしてますし…」 ミレーン「そんなものはこれしかないだろ、ケンタウロス一択だ。弓でも持たせておけば説得力も増す!」 ライト「ケンタウロスで行くには足の付き方のバランス悪くないですか? そもそも6本もあるし。それにメインで動かす前足が布からどうしても出ちゃいますよ」 ミレーン「今は多様性の時代だ! ケンタウロスに足が6本あってもいいだろ! 俺だって手が3本ぐらい増えてたこともある」 「とりあえず前足には何か履かせるか…。ズバリ!ニーハイだな! ルーズソックスという案も考えてたんだが、前足を全部隠したら全然ルーズな部分がなくなるので却下した」 ライト「今しれっと凄いこと言ってませんでした? こんなごんぶとの足を入れることのできるニーハイとかってあるのかな…。でも色々考えてもいつものパターンで結局職務質問されそうな気がする…」 ミレーン「いいかライト、職務質問を恐れる必要はない。避けようとしたり非協力的な態度を取れば取るほど彼らは疑いをかける。さぁ何でも聞いてくださいという態度で堂々としてればあっさり終わるものなのだよ」 ライト「堂々としてればいいっていつも言ってますけど。覆面被ったいつもの不審者スタイルで職務質問食らうと、聖騎士ですって言い張っても全然信じてもらえないじゃないですか! 最終的にプロレスラーですと言うと解放してもらえるし」 ミレーン「いや、あれは職務質問してきた警官たちが無知なだけだ! 全くこの聖騎士の正装のことを知らないとは…」 「それはさておきナチアタの件だな。一ついいアイデアを思いついた。我々の仲間の人間という設定だから無理が出るのだ、逆転の発想で我々の連れている魔獣ということにすれば良いのでは!」 ライト「まぁ確かにテイマーの人とかは魔獣連れで歩いてるのをよく見かけますけど、人口の多い地域だとリードだの引綱だの付けて逃げないようにしないといけませんよね。ナチアタさんに首輪とリード付けたら、どう考えても特殊なプレイをしてると勘違いされますよ」 ミレーン「ナチアタも女性だから確かに恥じらいもあるだろう…。ちょっと聞いてみるか? おーい、ナチアタ!」 ナチアタ『(大丈夫!大丈夫!というリアクション)』 ライト「いや大丈夫じゃないのはこっちです! 多分が僕がリード引くことになるんだから、僕がとんでもないド変態に見られるんですよ。それに宿とかどうするんですか? ナチアタさん一人だけ馬小屋とか牛小屋は可哀想ですよ」 ミレーン「確かにそれもそうだな。だったらこの子は私たちの大事なペットなんです! もう一人分宿代払うから一緒の部屋にお願いします!と言えば何とかなるんじゃないのかな」 ライト「いやもうねぇ、今のセリフだけで宿屋のおじさんの見ちゃいけないもの見るような目が容易に想像できるんですよ! 断られなくても多分次に出てくるセリフは『お盛んなのはいいが部屋汚すんじゃねぇぞ』ですよ。完全に特殊性癖だと思われる…」   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇ 結局埒が明かないのでケンタウロス案で行くことにした。意外と何とかなりました。都会の無関心ってすげーなと思いました。 ※職務質問もされましたが理由はやっぱり覆面でした。